もしも悩みの答が"恋の病"なんかだったら

  可愛いセンチメンタルでいいのでしょうけど



秋色ロマンチスト



 目を覚ました瞬間おぼろげな感覚器官が感知した煙草の匂いに、

 アレンは不快そうに眉をよせた.

 すぐにイコールで繋がる人物に対する小さな反抗だった.

 そういえば、そろそろ師の煙草が切れる頃ではないか.

 しまった、とアレンは再び唇を噛んだ.

 ゆっくり身体を起こすが起き上がりたくはない.

 諦めた振りをしてシーツに顔を埋めてみても、思考回路はなにひとつ変わらない.

 朝食用のベーグルはまだあった.

 卵もまだある.

 コーヒー豆は、

 ・・・なかったかもしれない.

 どこからか吹き込んだ風が落ち葉を囁かせる季節だ.

 シーツ一枚ではさすがに寒い.

 早く起きろと師が呼んでいるような気さえしてアレンは自嘲した.

 小さな悩み事たちは発端も帰路もただ一人.

 「おはようございます師匠.」

 「ようやく起きたか馬鹿弟子.」

 師の表情がいつも通りなのが不思議だ.

 アレンは目をぱちくりさせてもう一度師を見たが、相変わらず.

 なんで怒ってないんだろう・・・.

 ねぇ、ロザンヌ.

 足元の食人花は蕾を右へそよがせるだけだった.

 「昼には此処を発つぞ.」

 「・・・はい師匠.」

 突然のことにももう驚いたりしない.

 戸惑うなんてもってのほか.

 「今度は何処に行くんですか?」

 この部屋は南向きの出窓があって気に入ってたのだけど.

 「ちゃんと寝るところがあれば何処でもいいですけど.」

 場所によっては師の煙草をまとめ買いしなくてはいけないだろう.

 「お前ってホント・・・、」

 「なんですか?」

 頭の中で旅費の計算を始めていたアレンは再び師と目を合わせた.

 「可愛くねぇガキ.」

 アレンの白い髪をかき撫でながら言う.

 「師匠みたいなだらしない大人に言われたくありません.」

 不満げに見上げる相手はあまりにも大きい.





 可愛い子供なんて邪魔なだけでしょう





 いつか失うものに執着するなら





 せめて





 あなたに必要とされていたい







本誌の師匠登場にかなり浮かれています(笑)
修行時代を妄想しはじめたら止まらないです(おぃ
07.09.02